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2012年5月21日 (月曜日)

「テルマエ・ロマエ」の感想

脚本:武藤将吾/監督:武内英樹

TOHOシネマズ錦糸町にて

 「のだめカンタービレ」に続いて、またしてもマンガを完璧に映画化した快作誕生!
 原作は、古代ローマと日本の風呂文化への愛情に溢れて、爆笑しながら感動してしまう名作だが、それが、これほど完璧に映画になるとは!
 チネチッタに乗り込んで撮影しただけあって、巨大なローマのセットは圧巻だし、しかもこのローマ、なんとも生活感に満ちていて、「人々が暮らしていたローマ」な空気が伝わってくる。
 そしてそして、阿部寛をはじめとする「顔の濃い役者」たちが、恐るべきコトに、誇大ローマ人に見えてしまうマジック!竹中直人がシュトレーゼマンに扮した以上の奇跡が起きた気がする。
 原作を実に上手く脚色して108分にまとめている。この映画は長ければだれるし、短すぎると物足りない。ぴったりな尺。

 日本の何処かの体育館に作り込んだ大浴場のセットも凄いし、まず美術スタッフの仕事に感嘆。
 高度なCGを使って群衆を増やしたり、「見渡す限りの古代ローマ」を作り上げたのは凄いが、ルシウスや「平たい顔の種族」たちがタイムスリップする場面では、わざとチープな「特撮」(人形が渦巻きにまかれてぐるぐる)にするのは、なんとも絶妙な呼吸で、そのワザの凄さに、またしても感嘆。ルシウスがフルーツ牛乳やケロリンの桶、シャワートイレなどに目をみはるのと同じ感覚で目を見張った。

 なにしろ、原作への愛情と尊敬があるので、見ていて本当に気持ちがいい。「のだめ」が成功したのは、原作への敬意が濃厚に感じられたことが最大の理由ではないだろうか。マンガの映画化というと、どこか馬鹿にして手を抜き安くあげる作品が多くて、失敗してきた。観客というかマンガ原作のファンは、そういう空気を敏感に見抜いてしまう。
 しかし、この作品のスタッフは違う。監督や脚本は、全力で原作の素晴らしさを映画に移そうとして、それに見事に成功した。
 その事実を目にしたら、これはもう、感動するしかない。
 有り難う!武内監督!アンタは凄い人だ!

 で。
 原作にはない「マンガ家ワナビー」な女の子をサブ主人公にしたのは正解。現代日本側でルシウスを受け止める登場人物は必須だ。その役を上戸彩は好演している。見事に「平たい顔の種族の代表」に見えるし。
 古代ローマのセットも見事だが、日本のロケも秀逸。那須の北温泉、天城の大滝温泉、伊香保、そして北区滝野川の銭湯と、いい場所を選んでいる。
 この映画とリンクしてJTBが出した「ルシウスおすすめ憧れの日本の温泉ベスト100」に載っている温泉を見ると、日本人が如何に温泉を愛し、温泉文化を育んできたのかよく判って、それにも感動してしまう。
 温泉が嫌いな日本人は、たぶん、いないだろう。いいなあ、温泉。そういう素朴な気持ちをルシウスという「異物」を登場させることによって、より深く刺激してくれる。
 このキモを映画は大事にしているから、作品として成功しているし、爆笑のうちに見終わって、感嘆と感動が残る。

 古代ローマにヴェルディやプッチーニというのはおかしいと言えばおかしいが、これがまた実にぴったりハマッてしまう不思議。1曲だけフォーレが出てきたけど、この選曲も冴えている。

 阿部寛がルシウスになりきっているのも驚異的だが、皇帝ハドリアヌスに扮した市村正親が、皇帝にしか見えないというのも驚異。舞台で鍛えた人の迫力だろう。北村一輝や宍戸開はご愛敬。

 こんなに凄い作品を見てしまうと、どうしても「2」が見たくなるよねえ。商売の上手いフジテレビだから「テルマエ・シリーズ」とかいってシリーズ物に仕立て……ないか?またチネチッタに乗り込むのも大変だろうし。かと言って経費節減でルシウスが現代日本に張り付いてしまうと面白くないし。

 しかしねえ、古代ローマ人も風呂を愛したのだろうが、日本人の風呂というか温泉好きというのは、もの凄いモノがあるなあとしみじみと感じる。それは、原作者ヤマザキマリに指摘されて初めて「そりゃそうだよなあ」と気づくところも多いのだが。ヤマザキマリの、日本の風呂に対する観察眼の鋭さと愛情の深さに、またしても感動してしまう。

 それにしても、原作への愛情、古代ローマへの愛情、日本の風呂への愛情が詰まった作品を見ると、本当に幸せになる。愛情を感じない映画に接すると腹が立つが、愛情に溢れた作品だと、こんなにも幸福な気持ちになるのか。
 だから、イタリア人が見ても楽しいし、ウケたのだろう。イタリア全土で公開するらしい。快挙だし、イタリアでも成功して欲しい。そして日本の素晴らしいお風呂文化を知って欲しい。

 この映画の関係者全員を尊敬する。よくぞ作ってくれました!

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