我々の合作に対する無知や誤解を正す
通常の日記の前に、書いておきたいことがある。
我々、合作小説家・安達瑶と「先輩作家」睦月影郎氏との間には、数年来の確執がある。その曰く因縁故事来歴を記すと長くなるので、書いてはみたがカットする。
しばらくは、こちらが隠忍自重してきたこともあって表面上は平穏だったが、ここ数日、それが拗れていた。
我々は一方的に攻撃されても出来うる限りスルーしてきたが、今回は正面切った誹謗中傷を受けたので、降りかかった火の粉は払わせて戴く。
それは、睦月氏が相方の口を封じたいがためだろう、「あなたは一人で書けないけど作家の肩書欲しさに、彼にパラサイトしてるだけでしょう。悔しかったら一人で1冊書いてみてください」と書いてきたからだ。
合作のパートナーの存在を否定されるのは、合作小説家・安達瑶にとっては許すことの出来ない最大の侮辱である。
だいたい、睦月氏は、我々の仕事の進め方をまるっきり知らない。知らないくせに、「合作」ということだけで批判しているのだ。対象を知らないのに批判して、それで相手が黙ったり従うと思っているのなら、それはあまりにも人間というものを知らなすぎる。
我々の現在の仕事の進め方を説明しておく。
新作のテーマや内容、漠然とした話のアウトラインは、日常の会話から生まれる。実際起きた事件やこれまでに観た映画、読んだ本など、すべての事が素材になる。
発案して、その案を強く推す方が、最初のメモを書く。
それをメールでキャッチボールして膨らませていく。プロットにまとめ章割りにして構成を立てるのは、だいたいがおれ、安達Oがやる。それはおれの方が時間があるから、という理由だ。
相方は遊んでいるのではない。別に仕事を持ち、老父の介護もしなければならない。フルタイム仕事に使えるおれに比べて時間的制約があるのだ。
で、おれは編集者との窓口にもなっているので、企画の説明やスケジュール調整、出版社への営業などもやるが、それもおれがずっと家にいる事が出来るから、だ。
企画が通って、本文を書き始めるが、短編の場合は相方が、長編の場合はおれが先行する。
章ごとに原稿のやりとりがあり、相方のチェックでおれが書き直す場合もあれば、相方が加筆修正する場合もある。どちらにしても相方の手の入らない原稿はない。
その原稿ファイルが何度も行き交う。
意見が対立するときもあるが、だいたいにおいて全体を見渡して方向を見定めるのは、相方だ。黒澤映画の脚本合作における小国英雄のような役回りと言える。また、最近の長編における女性キャラクターの多くは相方が造形したものでもある。
映画の話が出たので書いておくが、映画の脚本は合作が多い。顔を付き合わせて一緒に書く場合と、先行した原稿に別人が手を入れるケースもある。
娯楽映画においては、多くの才能が注入されることで脚本が磨かれる。エンターテインメントの場合、面白いか面白くないかが評価の最大のポイントだから、面白い方がいい。それには合作の方が多くのアイディアが入る。我が師・市川崑も、和田夏十という日本映画史上屈指の脚本家とコンビを組み(「東京オリンピック」のあと、和田さんが書かなくなったのは、体調の問題とともに市川さんの有馬稲子との浮気に腹を立てたからだと言われている)脚本もほとんど合作した。
それは、娯楽小説においても同じだと思っている。同じ一冊でも「二人分」のアイディアが注ぎ込まれているのである。特に近年は「メール」というとても便利な道具が出来たので、合作がとてもやりやすい環境になっている。
なので、おれは小説を合作することについては、まったく自然なものだと思ってきた。
推敲の段階になると、お互いの手がどこにどう入ったか、もう判らない状態になっている。しかし、文章のクセ・好みはあるので、ワガママを言わせて貰って、アンカーはおれが勤める。
その後のゲラは、お互いの手が入る。その点で、編集者諸氏には迷惑をかけることになるのだが、相手の赤を直して、またその上に直したり、という事も起きる。字の違う赤が入っているわけだ。赤を入れる分量は相方の方が多いだろう。ゲラの現物を見れば、証拠は歴然としている。
こういう風に2人が完全に融合して仕事をしているのに、どうして相方が「作家の肩書きほしさにパラサイトしている」呼ばわりされなければならないのか。
この点だけは、断じて容認するわけにはいかない。
相方と合作するのは、合作に伴う困難はあるが、 一人で書くよりはるかによいものが出来るからだ。したがって、合作を止めるつもりはまったくない。 その辺を「2人で書くなんてズルい!」と言われるならまだしも、実態も知らず、合作の片方が何もしていないかのように言いたてるのは誹謗中傷に他ならない。
作品の出来についての批判は素直に受けるが、我々の仕事の仕方についての批判を他人にされる謂れはない。合作をしているからといって睦月氏には何の迷惑もかけていないし、印税を倍貰っているわけでもないのだ。
また、相方には「一人で一冊」書くことに対する執着や意地のような意識が薄く、目の前にある仕事に注力することが筋であると考えている。実際問題、今の長編の品質を維持するのに必死で、短編さえ書く時間がないのだ。
以上の事から、たとえ過去に世話になった「先輩」といえども、以前のような敬意を抱き続けることは、もはや困難である。
人間関係を「先輩・後輩」という上下関係でのみ捉え、後輩にはどのような理不尽なことを言ってもかまわないとする、いわゆる体育会系的人間関係を続けることは出来ない。
なお睦月氏が理事長を務める業界親睦団体からはすでに退会済みであるが、業界の要職にあって重鎮かつ大御所的立場にある睦月氏は、言動に注意を払うのが宜しいのではないかと思う次第だ。
他にもいろいろとあって睦月氏には迷惑しているのだが、上記の事だけは看過出来ないので、はっきりと反論しておくとともに、我々の合作についての具体的な手法と姿勢を明記しておく。
で。
7時起床。
ここ数日のトラブルが収まって、今日は平穏に過ごせて仕事に集中出来るな、と思ったら、ミクシィ上で朝から大トラブル。
黙ってられないので少し反論したが、きちんとしたことはこの日記で書くことにする。
思えば、我が師・市川崑も「処刑の部屋」や「東京オリンピック」で理不尽な批判と闘ったし、心の師・小林信彦や筒井康隆にも幾多の戦歴がある。言うべき事は我慢しないで言っておくべきだ。我慢して沈黙すると、相手に受け入れたという誤ったメッセージを送ることになるわけだし。
この件について、ミクシィ上でたくさんの応援メッセージを頂戴して、勇気が湧いた。
温かいメッセージ、有り難うございました!
で、激しい怒りが収まらないウチは小説は書けないので、相方から引き受けた雑用を済ませる。WindowsのMSワードやPDFの文書をプレーンテキストに移して文字数のカウントをするというもの。こんな事、ものの10分で簡単に終わると思いきや、Macに読み込ませると書式が崩れたりしてコピペするだけでは用を足せない。
2時間ほどかかって、ようやく完了。
これで気分も落ち着いたので、昨日終わらなかった加筆訂正に戻る。
腹も減ったが、ここで食べると調子が狂って眠くなったりするので、終えるまで我慢。
14時過ぎになんとか終えて、食事に出る。
北千住東口の家系ラーメン「武蔵屋」で海苔増量ラーメンの並盛りに玉子とライスを付けて貰う。美味い。駅前の「味楽」も美味いが、この店は長続きして貰いたい。
もうすっかり秋かと思ったら、けっこう暑い。帰宅したら汗が出た。
「第3章」に入ろうと思ったが、「第2章」までの加筆修正などにかなりのエネルギーを使ったので、始められず。
雑誌の整理とかをする。
ソファで新聞を読んでいたら、寝てしまった。
陽が落ちた。
夕食は、コーンフレークとトースト、トマト。
19時30分からのNHK「東京駅復活」を見る。
感動の復活だが、丸の内のあの豪華な駅舎には、ホテルや駅長室の他に何があるんだろう?そういう紹介はなかった。まさかほとんどがホテルって事はなかろう。JR関係のオフィス?
引き続いて、「負けて、勝つ」。今夜は旧軍人の復活と戦う吉田茂。吉田茂と吉田学校を美化してるという批判は多いようだが、やっぱり、あの時の情勢で、吉田が取った選択以上のものがあったのだろうか?と思う。誰か教えて欲しいのだが。
吉田茂のやったことがすべて正しいとも思えないし、かなり強引な事もやったし、思惑から外れてしまったこともあるだろうし。
で、復活を画策する服部卓四郎を演じる吉田栄作がなかなかいい。危険な香りをガンガン漂わせている。
ドラマのあと、この服部卓四郎や辻政信について調べる。陸軍中枢で無能な作戦立案と指揮をして多くの将兵を犠牲にしてしまったのに、戦後も反省もせず戦犯にならず表舞台で復活を計ったこの2人は、最悪な人物だと言える。軍人ならなぜ敗戦時に自決しなかったのか!
他にも軍の指導者で戦犯として処刑もされず自己弁護に終始して生きながらえた唾棄すべき連中は多数いるが。
風呂に入り、くーたんと遊び、城島引退のスポーツニュースを見て、何故かCSにチャンネルを回すと、ディスカバリー・チャンネルかナショナル・ジオグラフィックの番組で航空機事故の解明モノをやっていたので見入る。速度や高度を測るための「ピトー管」が整備の時に塞がれたまま飛行して墜落してしまった事故。
なんだかんだで1時過ぎに就寝。
明日は午後、台風か。
本日の体重:89.85キロ
本日の摂取カロリー:1610kcal
本日の消費カロリー:日常生活+α
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これ、今更なんですが、リアルタイムで拝読させて戴いた際に気になって気になって仕方なかったのに何も書けなくて、それでURLだけ取っておいたんです(笑)
当時、先方の日記も読みに行きました。
勿論、先方も色々と書かれておりました。
この件に関して、何か意見をしようとは思いません。
でも、これだけは書いておこうと思いまして……。
僕、
安達先生(方)みたいな執筆スタイル、好きですよ。
僕からしてみれば「何故そこに甲乙を付けるの!?」って感じなのですが、それも人生。
人生、色々ありますからね(笑)
少なくとも僕は「応援」&「待機」しております。
だので、これからも頑張って下さい!!
相方さんにも、宜しくお伝え下さい。
専ら、
新刊「待機」中です。爆
投稿: 芦澤 | 2012年11月 1日 (木曜日) 16:12
有り難うございます。
我々が言いたいのは「多様性を認めて欲しい」と言うことだけです。
モノカキの数だけ仕事のパターンやスタイルはあるはずです。長年積み上げてきたパターンやスタイルならば、上下はないはず……。A氏にとって最良のパターンやスタイルでも、それがB氏にとってそうなのかどうかは、B氏にしか判らないはずです。
それだけです。
投稿: 安達O | 2012年11月 1日 (木曜日) 17:33
さすがに「気になさらずに」とは言えませんが、
あまり気になさらずにこれからも頑張って下さい。
僕は安達先生のスタイルを支持…… と申しますか、
安達先生のスタイルが好きなんで。
投稿: 芦澤 | 2012年11月 2日 (金曜日) 10:15
有り難うございます。
目下、鋭意頑張っております。
投稿: 安達O | 2012年11月 2日 (金曜日) 10:53