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2012年10月 5日 (金曜日)

圧倒的な「ピーター・グライムズ」!

 6時過ぎ起床。

 
 朝のモロモロ。
 昨夜は弁当2連チャンだったが、食べた時間が早かったせいか、体重は減った。
 
 で、仕事開始。
 相方のメモを読み返して、細々した描写や、主人公に託しておれの心情をあれこれ書き込むと、ゆっくりと作品的にハマってきた感じ。ま、いつものことだが。
 
 ブランチは、マルちゃん正麺・塩味にキャベツと玉子とチャーシューを入れて。
 
 ここ数日来の雨で、窓ガラスがすっかり汚れてしまった。しかしウチはベランダがないので、ガラスふきは危険。何度か身を乗り出して拭いたが、どうもこれは事故を呼びそう。
 で、ガラスを磁石のついたワイパーみたいなのでで挟みこんで拭くヤツがあったはず。アマゾンで探したら売っていたので、早速注文。窓ガラスが汚れているのは、メガネやキーボードが汚れているのと同じく、気持ち悪い。
 
 仕事を続ける。
 途中何度か止まったが、最終的には結構進んだので、ホッとする。
 
 小腹が空いたので、近所でおにぎりを2つ買い、食う。
 
 本日は新国立劇場で、ブリテンのオペラ「ピーター・グライムズ」を観る。ずっとイタオペ一辺倒だったが、この英国の現代オペラ(1945年初演だから、現代オペラだろう)は前から気になっていた。新国がやるというので、早々とチケットを押さえておいたのだ。
 
 駅で相方と待ち合わせて、初台へ。
 ちょっと早めに着いたので、オペラシティのくまざわ書店を覗くと、「闇の流儀」が平積みだったので、持っていたPOPを渡してご挨拶。
 
 その後、CASAが撤退したあとに出来たベルギーのベーカリー・レストランで夕食を取るが、開演45分前だったので「間に合いますよね?」と確認して注文。おれはグリルチキン、相方はサンドウィッチ。
 しかし、なかなか出て来ない。店の感じは、ゆったりした感じなので、ファーストフードみたいにはいかないとは思ったが……。
 焦ってきて、催促していたら出てきた。
 チキンをグリルした「モモ焼き」みたいなのを想像していたら、パンにチキンを乗せてたっぷりチーズを乗せてオーブンで焼いたオープンサンドだった。
 チーズの香りがキツくて獣の匂いがしたが、美味い。すこぶる美味い。焦ってなければもっと美味く感じただろう。
 お店の人は時間がかかって恐縮していたが、こっちも急かせて申し訳ない気持ちになった。これでたいして美味しくなかったら文句ダラダラだったろうが、美味しければすべて帳消し。
 このオープンサイド、かなりボリュームがあって、かなり満腹。
 
 開演10分前に店を出て、大劇場へ急ぐ。
 着席したら、ほどなく開演。

Ko_20004405_kouen

 「ピーター・グライムズ」は、村人に溶け込めない孤立した漁師が、どんどん村八分になって最後は自ら死を選ぶ、という悲劇的ストーリー……だと思っていたが、違った。
 さすがは現代オペラ。英国のモノだけあって、演劇的要素満点で、ブリテンの作品だからすこぶる知的。単純な筋立てで善悪白黒ハッキリさせた話を朗々と歌い上げるものではない。
 主人公ピーターは粗暴で人付き合いの悪い男。なにより徒弟の少年を一人殺している(嵐に遭った上での事故ではあるが)し、新たに孤児院から迎え入れた少年も虐待している様子がある。
 村人には総スカンを食っているが、唯一味方して好意を寄せてくれている未亡人で教師のエレンにも苛立ちをぶつけてしまう。
 これじゃ保守的で排他的で右へ習え的な、日本の田舎でもよくある「典型的村落」の人々に嫌われても仕方がないし、児童虐待してるんだから、批難されて断罪されても当然。と思える。
 しかし……。
 上演台本にどう書かれているのか判らないが、ウィリー・デッカーの演出は、ピーター自身が愛されずに育ち、親に虐待されて成長したんじゃないかという気配を濃厚に漂わせる。
 だから、孤児院から引き取った少年への接し方がよく判らない。虐待する気はないのだが、労働力として「貰ってきた」んだし、村人を見返してエレンと結婚するためには魚を捕りまくって金を稼がなければならない。だから嵐でも(嵐だから)漁に出る。
 村の連中がどうのこうのうるさいことを言うが、おれはおれのやり方しか出来ないんだから放っておいてくれ。と思うが、しかし、村から完全に孤立して生きていくことは出来ないし、他所に行く気もない。ピーターは生まれ育ったこの村を愛しているのだ。
 愛している村からどうして出ていかなければならないんだ!
 
 村人は頑迷で保守的で異物を排除したがるダメな連中とは描かれない。そう描かれた方が、観る側としてはスッキリしてピーターに感情移入できるからスッキリするんだが……。
 ピーターにしても、善人ではないし悪党でもない。ただ、「愛」を知らない。だからエレンとの上手な接し方が出来ないし、少年の扱いも「力で従わせる」以外の方法を知らない。
 ピーター自身、それを悩んでいる。
 すこぶる、現代的なテーマで、ぞっとする。
 虐待の連鎖、と言う言葉が浮かぶ。イジメ、村八分という言葉も。
 しかも、このオペラには「救済」はない。ワーグナーみたいな「安易な救済」(言ってしまうぞ!)はないのだ。
 ピーターに拒絶され少年の死を予感したエレンは絶望し、自分を守るために、村人の一員に戻っていく。ラストの場面で村人の中に入って座り、顔を隠すエレンの姿が、なんとも辛い。
 
 このオペラは、まず、エレンと死んでしまう少年が可哀想で仕方がないが、そういう感傷を拒否しているところもある。
 とても乾いているのだ。
 イタオペ的なウェットな共感とか感情移入を廃して、観客に「もっといろいろ考えてくれ」と問題を放り投げてくる。
 それは、ブリテンの心情の濃厚な反映だとしか思えない。同性愛者として、理解されない自分についての吐露。
 
 しかし、音楽はとても美しいし、潤っている。潮の香りが漂ってくる。漁村の朝の海からの湿り気で包まれた感じが、ひしひしと伝わってきて、この感覚はなんだか驚異的だ。
 嵐の夜の酒場にみんなが集まっている場面の音楽的描写も素晴らしい。
 東フィルは透明感溢れる音を紡ぎ出して、素晴らしい。このところ、ピットに入った東フィルに外れはない。
 
 ソリストたちも見事で、タイトルロールをやったステュアート・スケルトンは粗暴だが自らの粗暴さに悩むピーターを演じきり歌いきったと思う。
 エレン役のスーザ・グリットンも、ピーターのことが理解出来るが故の哀しみを哀切極まりなく表現して、感動的。
 村で一番公平で、深いところまで考えているバルストロート船長のジョナサン・サマーズもしみじみした歌唱で心に残る。
 少年(無言のまま歌はない)を演じた子役の名前が判らないが、孤児院から貰われてきてピーターに力で従わされる可哀想な少年を演じきっていたと思う。
 
 オープンサンドで満腹のままなので、今夜はそのまま帰宅する。
 いろんな解釈が出来て、安易な感動を拒絶しているかのような作品だったので、帰り道、相方とあれこれ喋り、プログラムに書いてあった初演の際のトラブルを読んだりして、帰宅してから涙が止まらなくなってしまった。
 ブリテンも、「理解されない」側の人間であり、その悲哀と怒り、苛立ちと諦観があった。下の写真は1959年のブリテン。

Britten_photo_hanswild

 この作品の大成功で、ブリテンは一躍、「英国を代表する大作曲家」の名声を勝ち得て、このオペラは世界中の歌劇場のレパートリーになった。20世紀に入って書かれたオペラで人気演目になったものは数えるほどしかないが、ブリテンは複数の作品が人気を勝ち得ている。
 それは、音楽を聴けば納得する。
 圧倒的なんだから。
 
 「タモリ倶楽部」は全国にいる森田さんシリーズの第1弾。しかし半分以上寝てしまった。
 
 1時就寝。
 何故か夢で、「クレイジーキャッツの『失われていたと思われていた幻の超大作』が発見された!」というニュースに接した。タイムマシンを駆使したドタバタで、彼らのキャリアの最後を飾った作品、というまことしやかな情報が載っていて、目が覚めてもしばらくは、そういう映画があったのかと信じてしまったほど。
 なんでこんな夢を見たのか、全く理解不能。
 
本日の体重:89.15キロ
本日の摂取カロリー: 1704kcal(もっと少ない可能性大)
本日の消費カロリー:日常生活+α+292kcal/4962歩

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コメント

コメントは初めてかもしれません。勝山です。

ブリテンについて無知でしたが、安達先生の日記を読み、俄然興味がわきました。
現代ロックにおいても、彼がテーマとしたような内容のものは、伝統的に?人気があります。
例:The Who

ありがとうございました。

かつやまさん:
モロに「現代」で、ロックにこそこういうテーマの曲は多いと思います。ロックはほとんど聴かないのでよく判らないのですが……。
ブリテンには「ねじの回転」のようなホラー・オペラもあります。なんせ音楽が美しいので、内容は重いけれど聞き惚れてしまいます。
The Who、聴いてみます。まずは何から聴けばいいでしょう?

The Who、私もマニアックに詳しかったりするほどではないんですが、「四重人格」というアルバムがありまして、私としてはこれを映画化した「さらば青春の光」がとっつきやすいのではないかと思います。

映画は80年代の製作ですが、60年代のイギリスの若者風俗もよく描けていますし、The Whoの音楽だけでなく、他の音楽もいいですよ。映画としてもかなりの作品だと思います。私は繰り返し見ていますが、何度見ても泣けます。
まさに 「他人に受け入れてもらえない人間」 の物語。
おそらく廉価盤のDVDがあると思いますので、良ければ是非。

The Whoの楽曲は、歌詞がぐっと来るんですが、そのせいもあって日本ではあまりポピュラーな人気がありませんが(クイーン等のようには)、本国イギリスでは国民的バンドの一つであります。

アルバム「四重人格」と映画「さらば青春の光」ですね。
映画の方は題名と評判はよく聞きます。早速見てみようと思います。
ご教示有り難うございます。

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