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2014年8月 5日 (火曜日)

GODZILLA ゴジラ

監督:ギャレス・エドワーズ/脚本:マックス・ボレンスタインフランク・ダラボンデヴィッド・キャラハムドリュー・ピアースデヴィッド・S・ゴイヤー

楽天地シネマ1にて

 本気で作っているのはよく判る。東宝のダメダメだったゴジラだってスタッフはそれなりに本気で作ってはいたのだが。とにかく、この作品は本気の超大作、という事は伝わってくる。

 しかし……。

 いろいろと設定やストーリーに疑問が噴出する。それが冒頭に集中しているので、出鼻をくじかれるのよね。

 シナリオ作りに時間を掛けて、シナリオライターにはそうそうたる顔ぶれが並んでいる(フランク・ダラボンまでいるぞ!)が、どこに時間を掛けたのかよく判らない。

 ジャンジラという日本ではないような地名にしたのは何故?好意的に解釈すれば、特定の地域を連想させないためだろうか、と思うが、アメリカのホノルルやラスべガス、サンフランシスコは実名で出しているのに……

 だいたい、富士山の麓にあって超高層ビルが林立する大都市のすぐそばに原発がある、と言うのがリアルじゃない。好意的に解釈すれば、アメリカ的なスケールで考えると福島第一原発も浜岡原発も東海村も、すぐそばに東京があるじゃないか、こんな危険なことは非常識だぞ!という猛毒な皮肉かもしれないが……。

 で、日本にはないデザインの加圧水型原発をアメリカ人が管理しているような描写はナニ?あの原発は、アメリカの企業が管理して日本の電力会社に売電しているのか?これも好意的に解釈すれば、日本人には原発を管理運営する能力が無いからアメリカ人が管理してるんだぞと言う猛毒なメッセージなのか?


 主人公フォードの両親が勤務しているのは日本の原発じゃなくして、何かの国際的研究所と言う設定にして、「最近あの原発付近で異様な振動が観測されるのだが」ということで長期的調査に出向いていたら……と言う設定じゃマズかったのか(設定の説明に時間を尺を取り過ぎる?)?


 そして、緊急事態が起きて、謎の巨大生命体が現れるが、現場を日本なのにアメリカ軍が管理していたが、これは何?日本は主権国家じゃないのか?

 まあこれも、好意的に解釈すると、こういう仰天動地な異常事態が発生した場合、日本政府は当事者能力を失ってしまったので、アメリカ軍が出ていくしかなかった。もしくは、旧来の研究のためにアメリカ軍が強引にこの地域を「接収」してしまったという、これまた猛毒な皮肉?

 しかしねえ、映画の設定をいちいち「好意的解釈」してみなきゃいけないというのは、脚本の失敗じゃないのか?

 そして、ゴジラのあり方というか、「邪悪な怪獣をやっつける(結果的に)人類の味方」なゴジラという設定は、もうやめたんじゃなかったの?

 これはもう、ゴジラじゃなくて、ガメラ。そして、この映画は、「ガメラ対ギャオス」。それも、金子修介版の「平成ガメラ2」を大いに下敷きにしている。これのリメイクと言っても絶対に間違いではない。金子修介は「ギャレス、ガメラを見たろ……」と語っているらしいし、けっこう多くの人が同じ指摘をしている。

 抵抗感があるのは、「米英仏ソの核実験は、核開発競争ではなく、怪獣退治だった」(あれ?ソ連は南太平洋で核実験をしてないよね?)という設定。「1954年でも死ななかった」とか。

 正面から、「核開発競争で核実験を繰り返したことが、怪獣への養分補給になっていた」とする方が、本来のゴジラの世界観に合致するはず。

 その意味でも、この映画の脚本は、どうも戴けない。

 それと、「電磁パルス」って、核爆弾の爆発でも生じる。これは反核戦争映画の秀作「ザ・デイ・アフター」で克明の描写されているが、電磁パルスは電気回路を破壊してしまう。一度壊れたモノは回復しない。つい最近、太陽風が間一髪、地球を外れて直撃を免れたという事実があった。直撃されていたら、地球上のすべての電子機器が破壊されて18世紀の文明に逆戻りするところだったと言われている。なのに、この映画では、停電が直るように、回復するんだよね。

 それとそれと、ラストでサンフランシスコの沖合で核爆弾が爆発するが、近くを飛んでいたヘリコプターは爆風で落とされるか、熱線を浴びて燃え上がるか、放射線をモロ浴びて、乗っていた人間はいずれ死ぬんじゃないか?

 このへんの描写は、アメリカ映画の伝統で、とても甘い。

 とは言え。

 怪獣の巨大さや恐ろしさ、質感量感のリアルさ、軍事関係の描写のリアルさ、破壊されたホノルルやラスベガス、サンフランシスコの描写のリアルさは、さすがアメリカ映画だと思った。

 そして、怪獣をやっつけるために用意された核ミサイルの起爆装置が作動していて、アレを何とかしなければサンフランシスコが核兵器によって破壊されてしまう、というタイム・サスペンスを設定したのはよかった。……あんまりイカされてなかったけどね。

 金門橋の橋の上での場面も、ワイヤーが切れかけて橋の上のバスが海に落ちそうになるというサスペンスが作れたが……粗編集で4時間になってしまったらしいから、そういう細かいサスペンスはカットなんだろうな。

 リアルさを徹底してSF味は排除する方針で臨んだようだが、ホノルルに空港と市街地を結ぶ高架鉄道(モノレール?)なんか、あったっけ?最近開通したのか?

 続篇が出来るそうだが、シナリオライターは代えた方がいい。平成ガメラ・シリーズを書いた伊藤和典さんを三顧の礼を尽くして招くべきだ。今、リアルな怪獣映画の脚本を書けるのは伊藤さんしかいない、と強く思っている。そして監督も、金子修介を招くべきだろう。

 ケン・ワタナベがゴジラ第1作アメリカ公開版のレイモンド・バーの役を踏襲する必要があったか?要所要所に登場するが、結局は無力な傍観者でしかない。あの役なら、もっと強く「あのギャオスみたいなMUTOはゴジラにやっつけさせるべきだ!」と進言して核ミサイル攻撃を阻止するべきだった。

 そのケン・ワタナベの相手役が海軍提督。この痩せたオッサンは誰だろうと思ったら、デヴィッド・ストラザーンだった!「グッドナイト&グッドラック」でエド・マローを好演して名優の域に達したストラザーンだったのか!でも、彼の含蓄を含んだ芝居を見せられる場面はなかったね。カットされたのか?


 日米共に国家の存亡に関る空前絶後な大災害なのに、政府高官がまるで出て来ない。海軍提督は1度だけ大統領から電話を受けるが。ま、下手に政治家を出すとややこしい事になるから、現場責任者の海軍提督を「政府側の代表」にしたんだろうが……。

 で……こういう映画を観ると、伊福部サウンドで育った者としては、あの「伊福部怪獣映画のテーマ」が朗々と鳴り響いて欲しい……。

 日本を意識させる尺八めいた音が鳴ったけど、ああいうのは邪魔じゃないの?

 主人公フォードがパラシュートで降下する場面に、「2001年宇宙の旅」で使われていたリゲティの混声合唱の曲によく似たモノが流れてるなと思ったら、リゲティでした。

 自然をあるべき姿に戻すために登場したゴジラ、という設定は、嫌だなあ。これって、東宝怪獣トーナメントプロレス映画の基本設定じゃないか。どんどん堕落していく伏線だ。

 怪獣は、ゴジラもガメラも、凶悪で人類の敵であるべきだ。ガメラはまあ、仕方がないが、平成ガメラがギリギリ。

 

 書いていると、いろいろ不満ばかりが出て来るぞ。

 まあ、迫力はあったし、東宝が作るゴジラの数千億倍凄いものにはなってるんだけど……。

 やっぱり、「平成ガメラ三部作」と「クローバー・フィールド」には及ばない。

 「平成ガメラ三部作」がいかに優れていたか。予算もない中で、よくぞあれほどの作品を作ったと感嘆するしかないし、とにかく、脚本がしっかりしていた。設定に無理がない。そして軍事関係の描写もリアルだったし。

 「クローバーフィールド」は、今、怪獣映画を作るなら、こういう搦め手じゃないとダメだ、と言う見本。アレは怖いよ。本当に怖い。リアルに怖い。たぶん、本当に怪獣が現れたら、ああいう風に怪獣を目撃して、パニックに巻き込まれて、必死に逃げて、そして死ぬんだろう。それを皮膚感覚で感じる。

 この作品も、津波の場面とか、目の前に巨大な怪獣がいて軍が攻撃する、という場面の迫力は物凄い。だったら、この線で推し進めるべきだったのだ。

 有能な脚本家が何人も揃って、イジリ倒した結果、焦点がぼけてしまったとしか思えない。

 次は、もっとビシッとした脚本で頼むよ!

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