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2014年10月21日 (火曜日)

ジャージー・ボーイズ

監督:クリント・イーストウッド/脚本:マーシャル・ブリックマン、リック・エリス

楽天地シネマ1にて

 ブロードウェイでロングランしているヒット・ミュージカル。往年の」ヒット曲をフィーチャーしたスタイルを「ジュークボックス・ミュージカル」と言うらしい。

 このステージも「マンマ・ミーア」の成功を見て企画されたらしいが、企画を練り上げる段階で、ただ単にフォー・シーズンズの歌をフィーチャーしたものではなく、殆ど知られていない彼らのリアル・ライフをドラマにしようと言うことになり、各人各様のとらえ方を「羅生門」スタイルで見せると思い付く。

 これでもう、作品の成功とヒットは決まったようなモノだ。アメリカには歌が上手くて芝居も出来るミュージカル俳優はたくさんいるんだし。

 そのステージを、完全に映画のスタイルに消化しているのが見事!(って、おれはステージを見ていないんだけど)。思えば、「ウェスト・サイド物語」だって、ステージと映画では構成が微妙に違うし、その改変したところが映画的にとても素晴らしかったりする。

 このステージの映画化は、過去の舞台ミュージカルの映画版と比較しても最上級の傑作なのではないか?

 とても素晴らしかった。

 アメリカ人なら、絶対に泣くだろう。おれはフォー・シーズンズにあんまり関心は無かったが、いくつかの曲はもちろん知っている。しかし、彼らの歌とともに時間を過ごし人生を重ねてきたオールド・グッド・アメリカンたちはもう、胸が張り裂けるほど感動するんじゃないだろうか?自分の人生に重ね合わせて。世のお父さんが号泣した「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」みたいに。

 バンドの黎明期に、新たに参加させようと呼び寄せた年少のボブが書いたばかりという曲をピアノで弾き聞かせている場面。

 「いいじゃん?」とフランキーが譜面を見ながらファルセットの合いの手を入れ、それを聞いたトミーも譜面を見ながらギターを入れ、ニックもベースで合わせる。

 フォー・シーズンズのスタイル誕生の瞬間!

 この場面が物凄く感動的!

 「アマデウス」で病に伏せったモーツァルトが口づてでサリエリに採譜させて「レクイエム」を作曲していくスリリングな名場面(これは「アマデウス」全編のクライマックスだ)の興奮に匹敵する!

 聞くのは好きだけど楽譜が読めず楽器も弾けないおれから見ると、彼らはなんて天才なんだ!と思う。

 フォー・シーズンズ誕生の瞬間の描写として、最高のエピソードだし、彼らの音楽性と実力も描いているし、物凄く上手い。って、誰に向かって言ってるんだってことになるが。

 スターとして驀進するが、順風満帆ではない。トミーの莫大な借金をみんなで返そうと決める場面も感動的。ニュージャージーのイタリア系の悪ガキの厚い友情というか「しょーがねーじゃねーか」という気風がよく判る。「バンドのために使ったカネもあるんだし」

 物語は概ね、フランキーを軸に展開する。ボブほど頭は良くないし、悪いことはしないわけではないが、情に厚い歌うことが好きな男。

 人間的には穏やかで才能溢れ、自分の権利はしっかり守るボブに共感するが、男気溢れるフランキーの魅力は眩い。贔屓しすぎてるんじゃないの?と思ってしまうほど。

 しかし、そんなフランキーも、仕事で忙しくて家庭を顧みることが出来ず、可愛い娘ばかりの家を棄て、離婚。とても可愛い末娘をドラッグで失ってしまう。

 人気も下り坂になった時と重なって、さすがにもう、スター人生もおしまいかと思われたとき、クールだけどジャージー・ボーイとしてフランキーへの友情を失っていなかったボブが書いた曲が大ヒット!

 泣いた。

 

 そして、華もあらしも踏み越えて幾星霜。

 ロックの殿堂入りした老いた4人の再会。

 そしてそして、エンドロールの映画最高のクライマックスが、地元の町を舞台に歌い踊る、大ミュージカル・シーン。

 ステージのカーテン・コールのように映画のために用意された一大ミュージカル場面は、圧巻。圧倒される。今まで静かに蓄えてあったパワーをここぞとばかりに爆発させて、登場人物全員が歌い踊り、群舞あり大規模なクレーンショットあり、豪華絢爛たるシネ・ミュージカルの極意をどっかーんと炸裂させた!

 これがもうね、涙もの。素晴らしいの一言。

 彼らを影で助けたマフィアのボス(好人物として描かれているので、本当に頼りになる一族のビッグ・パパという感じ……クリストファー・ウォーケン、最高!)もリズムを踏んでノリノリなのが嬉しい。

 ミュージカルの楽しさが、ここで一挙に大爆発!

 見終わった直後は、圧倒された感じがあってよく判らなかったが、時間を置いて振り返ると、なんとも巨大な作品で、涙が溢れてくる。

 

 「雨に唄えば」のクライマックスを飾る大ナンバー「ブロードウェイ・バレエ」の中の、田舎から出てきたジーン・ケリー(が扮するドン・ロックウッド)がブロードウェイのエージェントを廻って玄関払いされた末に採用されてスターの階段を駆け上がる「Gotta dance」のくだりが上手く引用されていて、作り手の過去のシネ・ミュージカルへのウィンクを感じた。

 ああ、ミュージカルって素晴らしい!

 と、久々に感じる事の出来た、傑作。

 いろいろ調べると、舞台版は2幕4場で、メンバーの4人の別々の視点で場を見せるという構成。これはこれで舞台炊きだと思うが、映画的にもっと熟れた、本作の演出は見事だと思う。カメラに向かって独白する人物がそのまま芝居に戻る呼吸が見事なのだ。

 この作品は、イーストウッド自身の企画ではなく、映画化権を取ったプロデューサーが脚本をイーストウッドに送ったところ、たちどころに返事が来て、監督することに決まったらしい。

 老いてますます盛ん!

 いや、年を取ってから監督として冴えに冴えて、年齢をまったく感じさせない。

 イーストウッドって、怪物だ。

 映画の中でボブが「ローハイド」を見ているカットがあったが、あれは自分へのウィンクか?

 同様に、ビリー・ワイルダーの時代に早すぎた不遇の傑作「地獄の英雄」を見て曲を思い付くシーンもあったりして(実話なんだろうけど)、映画ファンへのウィンクも。

 溜息が出ますな。

 もう一度見なければならない映画。

『大瀧詠一さんに観てもらいたかった映画。「ジャージー・ボーイズ」はイーストウッドの映画の中では別格というか特別というか、すごい映画だと思います。早くもクラシックというか、永遠のスタンダードの匂いがする』という小林信彦さんのコメントに涙。

『クリント・イーストウッドが、「ジャージー・ボーイズ」を監督する―初めてこのニュースを聞いた時は冗談かと思ったが、完成した映画を見た今は、運命の巡り合わせに感謝するばかりだ。もし観客からクレームがつくとすれば、「このシーンをもっとたっぷり見たかった。」というものに違いないほど楽しいエンディングは、ニュージャージー生まれの仲間という絆を、どんな時にも一番に考えてきたザ・フォー・シーズンズたちへの讃歌。一緒に踊りたくなること請け合いだ』という佐藤友紀氏の言葉に付け加えることはない。

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