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2016年6月28日 (火曜日)

「マネーモンスター」の感想(ネタバレあり)

原案:ジム・カウフアラン・ディ フィオール

脚本ジム・カウフジェイミー・リンデンアラン・ディ フィオール

監督:ジョディ・フォスター

TOHOシネマズ錦糸町にて

 ジョディ・フォスターの監督第4作。

 とても面白かった。以前けっこうあったけど最近少なくなっている、往年の筒井さんが得意にした「擬似イベント」もの。「狼たちの午後」とか「ネットワーク」とか、現実が少しずつ狂っていって……というパターンだが、今回はズバリ、「株式市場」がテーマ。

 まず、脚本が秀逸。マジに作れる題材をエンターテインメントに仕上げたのは凄い。プロデューサーにも加わっているジョージ・クルーニーが作ると、かなり硬派のマジな社会派(「グッドナイト&グッドラック」とか「シリアナ」とか)になるが、そうしなかったのは大正解。

 ジョージ・クルーニーが「アメリカの宮根」みたいにテキトーで調子がいいだけの司会者リー・ゲイツに扮して、投資を煽って「この株を買わないヤツはバカ!」みたいなことをやっているが……。

 アメリカでは、本当にこんな番組を放送してるんだろうか?あんまり現実から乖離したぶっ飛んだ番組を設定すると観客はシラケてしまうから、似たような番組はあるんだろうなあ。このへん、町山さんの解説を聞きたいけど。

 生放送中のスタジオに、司会者の言うことを信じて全財産を投資して見事にスッてしまった男カイルが、拳銃と「爆弾チョッキ」を持参して乱入し、リーを人質にとって放送の継続を要求し、番組とリーを糾弾しはじめる……。

 株で損するのは、これはもう自己責任と言うしかない。全財産を投資して一文無しになって……と言うのは大恐慌の時に起きた現象で、あの時も「空前の株ブーム」で、みんながこぞって借金までして株にカネを注ぎ込んで……大暴落。大変なことになった。戦争も起きた。

 今でも、株で大儲けした成功者の話が広まると、我も我もと投資して、大失敗というパターンは繰り返されている。

 投資の失敗については、同情は出来ない。ただ、株って、資本主義の象徴だよね、とは思っている。そして、株は上がったり下がったりするんだから、それも判らないヤツは投資、それも全財産を投資なんかするなよ、と思う。

 しかし、この映画では、「アイビス社の株価が暴落したのは、システムのバグがあったからだ、それはどうしようもない」とアイビス社のCEOが言い訳する。

 ここで1つ疑問があるが、株価って、株式市場が決めるでしょ?システムのバグって、株のトレードのシステム?ってことはニューヨーク株式市場のシステムって事?いや、映画ではアイビス社のシステムと言っていたけど……アイビス社が、自社株を売り買いして利益を出していたけど、その売り買いシステムにバグがあったという意味か?

 実際、近年の株価の暴落はコンピューターの自動トレードが悪影響を及ぼして、システムの設定の何かが作用して、ちょっとの株価下落が「一斉売り」のサインになってしまって大暴落が発生、と言うことが何度かあった。

 ああそうか。映画の冒頭で、「マネーモンスター」という番組の中で、アイビス社について簡単な説明をしてましたな。超高速トレードのシステムを開発したことで、他人より早く「勝機」を掴めたので成功を収めてきた、と。

 で、8億ドルの損失を出して、アイビス社に投資していた多くの顧客は大損したと。

 しかし「システムのバグ」って本当か?実はウラがあるんじゃないか?と真実を探っていくのが1つのスジ。

 それに、スタジオの中で「みんながアイビスの株を買えば株価は上がる!さあ、みんな買ってくれ!」と銃を突き付けられたリーが煽るが、逆に株価は下がってしまうとか、そういうくすぐりも交えていく。

 そして、雲隠れしていたCEOがウラでやっていた事実が判ってくる。

 バグを理由にしていたのはウソ(韓国人のプログラマー……なんか凄く怪しいぞ……が、「金額が1つの銘柄に集中しない設計になっているから、こんな事は起きえない。これは人為的だ」と証言)で、損失した8億ドルは別のことに投資されていて、その投資が失敗して「解けてしまった」のだと判ってくる。

 そして、リーが着用させられていた「爆弾チョッキ」の爆弾はニセモノだと判るが、この爆弾の起爆装置を警察のスナイパーが狙っていることも知る。つまり爆発させないためにリーは撃たれようとしている!

 その後の二転三転する皮肉が効いた展開が見事。

 リーは撃たれないように犯人カイルを盾にするし、爆弾がニセモノだと判っても、本物だと信じ込ませて、利用する。

 この辺で、お調子者の司会者リーも、「真相を暴きたい」ジャーナリストの本能に目覚めているし、ここまで見事に番組を引っ張り司会者の安全を確保してきたディレクター(ジュリア・ロバーツ)も、あらゆる手を駆使して「隠された事情」を暴いていく。

 この辺の過程を短く見せた手腕は見事だ。腕利きのハッカーがレイキャビク在住のアイスランド人というのも愉快。

 で、悪の権化のように描かれてきたアイビス社のCEOだが、彼は「まったく違法行為をしていない」。不適切だが違法ではない。どこかの元都知事が言ったようなことを言う。

 CEOはストライキ中の南アフリカの鉱山の株を安値で買って、ストを終わらせて株価が上昇したところで売って、大儲けしようとしたのだが、ストライキはいっこうに終わらず、損失が明るみに出てしまった、と。

 これは、資本主義経済のシステムとしては、CEOは別に間違ったことはしていないのだろう。ウソの説明をしたけど。

 しかし、犯人カイルは狙撃されて絶命。カイルの心情も判って友情すら芽生えかけていたので、リーは怒り狂う。

 このラストは苦いし、いろんな問題点も正面から突いている。

 監督のジョディ・フォスターは、「金融を描くのではなく、人間の弱点を描いたつもり」だとインタビューに答えたらしい。

 問題は重層的で、たぶん、正解はない。登場人物の細やかな感情も描き出し、ギャグもあり、サスペンスもあり、ちょっとだけカタルシスもあるが、苦い。この苦さが、いい。すべて解決してハッピー!なんてことはスペオペの世界にしかない。(苦い結末のスペオペも見てみたいけど)

 こういう作品は、尊敬するし、自分もモノにしてみたいものだ。

 現実を見据えて、問題点を炙り出しつつ、根はマジメだがエンターテインメント精神旺盛に、面白おかしく描いていく。

 これぞ、映画だと思うし、娯楽作品だと思う。

 お見事!

 この一言に尽きる。

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