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2018年4月 8日 (日曜日)

映画「ペンタゴン・ペーパーズ」の感想

脚本:リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー

監督:スティーブン・スピルバーグ

上野TOHOシネマズにて

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 快作!

 世界中のマスコミ関係者に見て貰いたい!特に日本の新聞関係諸氏に。

 なんでもでもアメリカ万歳という気はさらさらない。ベトナム戦争絡みのあれこれはアメリカ国民への激しい欺瞞であったし、多大な犠牲も出しているのだ。それはアメリカ人だけではなく、当然ながらベトナム人も。

 それに、ワシントン・ポストが完全無欠の絶対正義に立脚したスーパー新聞だという気はさらさらない。アメリカの国益に反することには敢然と立ち向かって、沖縄の基地問題でアメリカに対立姿勢を見せた鳩山首相をルーピーと呼んだのもワシントン・ポストだから。

 それはそうだが、この映画は素晴らしかった。

 重大な事実の隠蔽、重大な書類のリーク。報道の自由。

 これらは今のアメリカ、そして日本かと思うほど今のテーマだ。

 最後はもう涙ぐんで、見た。

 「アメリカは負けない」という不敗神話を日本人は笑えない。アメリカの前に「神国日本は絶対に負けない」と豪語していたんだから。

 冷戦下において、アメリカは負けることを許されなかった。と、歴代アメリカ大統領は信じて来た。国民はアメリカが負けることなど断じて許さないだろうと。実際は、厭世観が強まり、ヒッピー文化やラブ&ピースのムーヴメントが広がっていたのに……。

 この映画が優れているのは、「不慮の事故(有力マスコミ人として政治にかかわりすぎた夫の自殺)」で社主になったキャサリン夫人が、お金持ちの主婦から超一流の「覚悟を持った」マスコミの巨人」に至る成長物語になっているところだろう。

 メリル・ストリープでなければ演じきれない細かなニュアンスを、見事に表現していて、素晴らしいのひと言。

 そして、トム・ハンクス。彼が言えばどんな事でも真実であり正義に聞こえてしまう怖さすらあるハマり具合で、「会社を潰すかも」という恐怖で逃げ腰になりそうな夫人に強力にハッパをかける。まあ、どっちが辛い立場かと言えば、株主や全社員への責任を持つ社主のほうだよねえ。

 赤狩りのマッカーシーを追い落としたCBSの伝説のキャスター、エド・マローも、CBS社主が防波堤になれずに崩れていく(政府やスポンサーからの圧力に屈した)中で奮戦して、やがてCBSを辞めるのだが……、CBSのペイリー社主も、あの時は大変だったと思う。

 調べてみると、ワシントン・ポストは首都のローカル新聞ではあったがリベラル寄りの「高級紙」だったので、報道の自由を主張して邁進する素地は大いにあった。

 それにしても、70年代初頭は今とは比べものにならない「男社会」で、女の社主というだけで、どれほど風当たりがきつい……それ以前に、相手にして貰えなかった、マトモに扱われなかったか、と思う。

 それを考えると、「報道の自由を守る新聞社の戦い」と同時に「女性社主の成長物語」を描いたのは大正解だった。

 そして……もっとサスペンスを盛り上げる手は山ほどあった。輪転機を回す絶対的〆切に原稿が間に合うかどうか。これは軽く描かれたが……。

 重要な情報を知った主要登場人物が謎の殺し屋に狙われて夜の街を逃げる、とか、安っぽくサスペンスを盛り上げるあの手この手はたくさんあったし、スピルバーグなら、そのすべてを熟知していただろう。エピソードだけではない。もっとアップの切り返しを多用して音楽もおどろおどろしく盛り上げる、とか。

 しかし、この作品ではそういう事を一切やらなかった。

 スピルバーグがオトナになって、大人の落ち着いた演出をするようになった、と言うよりも、この題材ならば、静かにリアルにきちんと描く方が「題材の真実」に迫れると思ったのだろう。そしてその判断は極めて正しかった。

 余計な作為が入っていない、この作品の演出には本当に好感が持てる。

 そして……この時期にこそ、この作品を作って公開しなければならないと感じたスピルバーグの時代感覚に敬意を表する。どんな立派な論文や評論よりも、この映画の方がずっと雄弁だ。エライ先生の文章よりも、この映画を観た方が心を動かされて「報道の自由」は絶対に守らなければならない!と改めて思った。

 今、政権や権力者に忖度して擦り寄って代弁ばかりしている「名ばかりジャーナリスト」「肩書きだけ報道陣」は恥ずかしくないのか!と声を大にして言いたい。

 キャサリンも、かつては政界の大者と仲よくして「お友達のことは悪く書かないでほしい」と思っていたのだが……究極の選択を突きつけられて、彼女は、正しいが困難な方を選んだ。

 人間、そうありたいものである。

 微力ながら、残された時間を、そうあるよう、努力したいと思う。

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